フィリピンの会計・経理代行を日本品質で提供、BPOサービスで業務効率化
フィリピンの会計・経理代行を日本品質で提供、BPOサービスで業務効率化
はじめに
人手不足と人件費高騰に悩む日本企業にとって、フィリピンBPOサービスは業務効率化とコスト削減を同時に実現する有力な解決策となっています。しかし、会計・税務面においては、国の急成長に合わせて頻繁に法改正が行われるため、多くの日系企業が混乱する原因となっています。
特に会計・経理業務においては、英語力の高いフィリピン人材と日本品質の管理体制を組み合わせることで、国内業務と遜色ない精度を保ちながら大幅なコスト削減が可能です。
本レポートでは、フィリピンBPOサービスの現状から具体的なメリット、そして導入時の課題まで、詳しく解説します。
1.フィリピンBPOの現状
フィリピンは世界有数のBPO大国として、グローバル企業の業務アウトソーシングを支えており、世界的に存在感を高めています。首都マニラを中心に、地方都市にも拠点が広がり、産業全体が着実に成長を続けています。
現在では、多くの海外企業がフィリピンに業務拠点を構えています。政府による投資促進策や人材育成支援も進められ、今後さらに発展が期待されています。
市場規模について
フィリピンのBPO産業は2024年時点で約380億ドル規模に達し※01、成長を続けています。
フィリピンIT・ビジネスプロセス協会(IBPAP:IT and Business Process Association of the Philippines)の統計によると、フィリピンBPO業界は、182万人以上の雇用を創出し※01、同国のBPO産業はGDPの約7%を占め、世界シェアは 16~18%でサービス提供と雇用の数でインドに次ぐ世界2位に位置付けられている。※02 特に会計・経理分野では、CPA資格保有者が存在し、日本会計基準(JGAAP:Japanese Generally Accepted Accounting Principles)や国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)にも精通した人材が豊富です。
新型コロナウイルス感染拡大によりフィリピンの産業も一時的な影響を受けましたが、在宅勤務体制の整備とデジタル化の加速により、2022年以降は急速な回復を見せています。
- ※01出典:フィリピンIT・ビジネスプロセス協会(IBPAP)ニュースリリースより
- ※02出典:株式会社国際協力銀行「フィリピンの投資環境2024」P182「3.BPO産業」より
主要都市と産業クラスター
マニラ、セブ、クラーク、ダバオの4大都市圏にBPO企業が集中し、それぞれ異なる専門性を持っています。
首都マニラ圏(メトロマニラ)は金融・会計業務に特化したBPOセンターが多く、日本企業も拠点を構えています。一方、セブ市は英語コールセンターの中心地として発展し、24時間体制でのカスタマーサポートを提供する企業が集積しています。
クラーク経済特別区(CSEZ:Clark Special Economic Zone )では、ITサービスとソフトウェア開発に特化したBPO企業が多数進出しており、日本向けのシステム開発案件も増加傾向にあります。
政府支援と投資インセンティブ
フィリピン経済区庁(PEZA:Philippines Economic Zone Authority)による税制優遇措置と投資促進政策が、BPO産業の成長を後押ししています。
PEZA登録企業は所得税が最大7年間免除され、その後は総収入税(GIT:Gross Income Tax)5%の軽減税率が適用されます。さらに、輸入関税の免除、現地税の免除、外国人投資家への100%株式保有認可など、包括的な優遇制度が整備されています。
2021年に施行された企業復興・税制優遇法(CREATE法:Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)では、BPO企業の法人税率が30%から25%に引き下げられ、国際競争力のさらなる向上が図られています。
2.フィリピンBPOの主要サービス分野
フィリピンBPO産業はコールセンターやカスタマーサポートをはじめ、多様なサービス領域をカバーしています。企業のあらゆる業務ニーズに応じた柔軟な対応が可能です。
ここでは、主要なサービス分野について詳しく解説します。
コールセンターとカスタマーサポート
フィリピンは世界最大のコールセンター拠点として、売り上げを伸ばしています。
以前は、アメリカ英語に近いアクセントと高い英語コミュニケーション能力を活かし、米国や豪州向けのコールセンター業務が主力でした。近年は日本語対応スタッフの育成にも力を入れ、多くの日本企業がカスタマーサポート業務をアウトソースしています。
24時間365日対応の多言語サポート体制により、グローバル企業の顧客満足度向上に貢献しています。
バックオフィスと事務処理アウトソーシング
データ入力、文書管理、人事業務など、定型的なバックオフィス業務の処理能力は世界トップクラスです。
日本企業の間では、請求書処理、給与計算、在庫管理システムの運用などをフィリピンBPOに委託するケースが急増しています。特に中小企業では、月次決算業務や売上管理をアウトソースすることで、経理担当者の業務負担を大幅に軽減しています。
クラウド会計ソフトとの連携により、リアルタイムでの業務処理と報告が可能となり、経営判断の迅速化にも寄与しています。
進出する日本企業の経理業務における課題
現在、多くの企業が直面している経理業務の課題は、「情報の遅延」「不安定な組織」「非効率な作業」の3点に集約されます。まず、現場の処理遅延により月次試算表の作成が翌月末までずれ込み、迅速な経営判断が困難な状況にあります。その背景には、業務の属人化と過度な負担による「経理人員の早期離職」があり、採用難も相まって、引き継ぎコストが慢性的に発生しています。
さらに、複雑なExcelを用いた手作業主体の「アナログ管理」が、ヒューマンエラーを誘発し、データのリアルタイム性を著しく損なっています。こうした属人化と非効率な環境の連鎖が、経営の透明性とスピードを阻害する大きな要因となっています。
オフショアソフトウェア開発
フィリピンのIT人材は急増し、Java、Python、.NETなどの主要プログラミング言語に精通しています。
日本企業向けのシステム開発では、時差を活かした24時間開発体制が可能で、プロジェクト期間の短縮と開発コストの削減を同時に実現しています。特にECサイトの構築、業務管理システムの開発、モバイルアプリケーションの制作において高い評価を得ています。
アジャイル開発手法の導入により、顧客要件の変更にも柔軟に対応し、品質の高いソフトウェアを提供しています。
財務・会計・人事などの業務
CPA、CFA、HR認定資格を保有する専門人材が豊富で、高度な財務・会計・人事業務を担当しています。
日本の上場企業では、連結決算業務、税務申告書作成、内部監査支援をフィリピンの会計専門チームに委託するケースが増えています。IFRS(国際会計基準)に精通したスタッフが多く、グローバル企業の会計業務標準化にも対応可能です。
人事業務では、給与計算から人事情報管理、採用支援まで一貫したサービスを提供し、日本企業の人事部門の業務効率化を支援しています。
3.フィリピンでBPOを導入するメリット
フィリピンBPOサービスは、コスト削減だけでなく、サービス品質向上や事業継続性の確保など、多角的なメリットを提供します。さらに、文化的な親和性や柔軟なコミュニケーション能力により、海外拠点との円滑な業務連携を実現できます。
ここでは、コスト面・品質面・コミュニケーション面それぞれのメリットについて詳しく解説します。
コスト削減の効果
フィリピンBPOを導入する最大のメリットは、大幅なコスト削減の可能性です。フィリピンがBPOの委託先として選好される理由の一つに、労働者を比較的低賃金で雇用可能であることが挙げられます。
人件費は日本国内の約3分の1から5分の1程度で、年間数百万円から数千万円のコスト削減効果が期待できます。
実際、フィリピンの賃金水準はASEAN主要国の中でも低い水準にあることが示されています。これにより、日本国内でのオペレーションと比較して、人件費を中心としたコストを大幅に抑制できる可能性があります。このコストメリットは、国内ではリソース不足だった業務体制を充実させるといった戦略的な利点にも繋がります。
ただし、海外BPOの導入時には、言語対応や商慣習の違いによる付加的なコスト(オーバーヘッド)が発生する可能性も考慮すべきです。導入プロセスが業務の標準化や効率化を促進する副次的な効果も報告されていますが、当初の見込みほどの削減効果が得られない場合もあるため注意が必要です。
サービス品質・顧客満足の向上
ISO認証取得企業が多く、6σ(シックスシグマ)やリーン生産方式などの品質管理手法が広く導入されています。
フィリピンのBPO業界では、国際的な顧客からの要求もあり、多くの大手・中堅企業がISO27001(情報セキュリティ)やISO9001(品質管理)といった国際認証を取得しており、国際基準の品質管理体制を確立しています。処理精度については、企業努力により高い処理精度を維持している事例が多く、エラー率は日本国内業務と同等のレベルを実現しているケースが一般的です。
日本人マネージャーの配置や定期的な品質監査により、日本企業の要求水準に合わせたサービス提供が可能です。
コミュニケーションの優位性
英語を公用語とし、欧米企業との取引経験が豊富なため、国際的なビジネス慣行に精通しています。
時差が1時間と少なく、日本の営業時間内でのリアルタイムコミュニケーションが可能です。また、日本語研修を受けたスタッフも増えており、簡単な日本語での業務指示や報告書作成に対応できる企業も多数存在します。
文化的にホスピタリティ精神が根付いており、顧客満足を重視する姿勢は日本企業の価値観と親和性が高いとされています。
- 24時間365日の対応体制により、緊急時の業務継続が可能
- 英語でのグローバル基準業務処理により、海外展開時の対応がスムーズ
- 多様な業界経験を持つ人材により、専門知識を活かした業務改善提案
- 継続的な人材育成により、長期的なパートナーシップ構築が可能
4.フィリピンBPOのリスク対策
フィリピンBPO導入時には、情報漏えいやサイバー攻撃に備えたデータ保護体制の整備が欠かせません。加えて、停電や自然災害などのインフラリスク、現地の法務・税務規制への対応も重要な課題となります。
ここでは、これらの主なリスクと具体的な対策について詳しく解説します。
データ保護対策
フィリピンの個人情報保護法「データプライバシー法」(DPA:Data Privacy Act of 2012)※03:Republic Act No. 10173により、個人情報保護の法的枠組みが整備されています。
主要BPO企業では、SOC(セキュリティオペレーションセンター)の設置、暗号化通信、アクセス制御システムなどの多層防御体制を構築しています。特に金融・医療データを扱う企業では、HIPAA、PCI DSS、SOX法などの国際コンプライアンス基準への対応も完了しています。
日本企業との契約においては、NDA(機密保持契約)の締結、データ所在地の明確化、監査権の確保などを含む包括的なセキュリティ合意書の作成が標準的な手続きとなっています。
※03出典:フィリピン共和国 国家プライバシー委員会(NPC)より
インフラ障害・自然災害への対策
フィリピンは台風や地震などの自然災害リスクがありますが、BCP(事業継続計画)の策定により影響を最小限に抑えています。
主要BPOセンターは複数拠点での冗長化構成を採用し、災害時には他拠点での業務継続が可能な体制を整備しています。停電対策として非常用発電機を完備し、通信インフラの二重化により高稼働率を維持しています。
2020年の新型コロナウイルス感染拡大時には、在宅勤務体制への迅速な移行により、サービス中断を最小限に抑制し、危機管理能力の高さを実証しました。
法務・税務コンプライアンスの対策
フィリピンと日本間の租税協定により、二重課税の回避と適正な税務処理が確保されています。
BPOサービスの利用において、移転価格税制への対応、源泉徴収義務の確認、消費税の取扱いなど、税務コンプライアンスの確保が重要です。現地税理士との連携により、フィリピン国内法と日本の税法双方に適合した契約構造の構築が必要となります。
労働法コンプライアンスでは、現地雇用法の遵守、社会保険の適正処理、労働争議の予防対策などを含む包括的な法務リスク管理が求められています。
- 契約書における準拠法と紛争解決条項の明確化
- 知的財産権の保護と帰属に関する合意事項の策定
- 定期的なコンプライアンス監査とレポーティング体制の構築
- 現地法律事務所との顧問契約による継続的な法務サポート確保
まとめ
フィリピンBPOサービスは、日本企業の業務効率化とコスト削減を実現する有効な戦略として、その重要性がますます高まっています。
特に会計・経理分野では、高度な専門知識を持つ人材と日本品質の管理体制により、国内業務と同等の精度を維持しながら大幅なコスト削減が可能です。
成功のためには、適切なパートナー選択、包括的なリスク管理、継続的な品質監視が不可欠であり、専門家のサポートを得ながら慎重な導入検討を進めることが重要といえるでしょう。
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC.(NKフィリピン)は、日本経営グループ(1967年創業)の100%子会社としてフィリピンで設立いたしました。
日本とフィリピンの両面から一括してお客様のビジネスをサポートできるため、両国が関わる問題も安心してご相談いただけます。
フィリピンで日本品質の会計サービス
日本とフィリピンの会計・税務に精通した日本人スタッフと現地スタッフがチームで対応致します。ご相談ください。
レポートの監修者

吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC. 取締役
2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 税理士法人日本経営)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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事業形態
事業・国際税務
- 種別 ホワイトペーパー

